こころびより
サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?
February 03
「チョコレートケーキを作る!?」
いつもより少しだけ高いトーンで、和希が口にしたことをそのまま繰り返す。
「そう!」
千奈の驚きに気がつかないようで、和希は元気よく頷いた。
「バレンタインだし! 今年はちょっと頑張ってみようかなって」
わずかに頬を染める和希は、とても可愛いと思う。
見ているこちらが恥ずかしくなるくらい、可愛くなったと思う。
それは見た目だけのことではなくて――見た目は前から可愛かったと千奈は思っている――元気が良すぎるほど良くて、男子顔負けだと思うくらいだったものが、最近はちょっとなりを潜めている。
それは好きな人がいるからだ。
あの和希が、と思う。
誰よりも、きっと千奈よりも恋とか誰かを好きになるとか、そういうことから遠いと思っていた和希が、千奈よりずっと先に、一人の男性を特別に想うようになった。
それが―――千奈には、寂しい。
2年前は和希が一人の人を好きだということを苛立たしく思っていたが、今はそれほどではない。
それでも、やっぱり和希にとって自分より大事な人がいるというのは、心穏やかではいられない。
和希はもちろん千奈のことをないがしろにすることはないというし、千奈は千奈で特別なのだと言ってくれる。
千奈もわかっている。
だが、わかっていることと、感情が納得するのとはまた別の問題だ。
いつか、千奈にも和希のように特別に想う人が出来たら、そのときは心から和希の想いを応援することが出来るのだろうか。
とはいえ、今の可愛い和希のことを応援しないということも出来ないのだが。
「そう………」
それでも今の和希の発言には、不安を覚える。
応援はしたいが、こればかりは大丈夫だろうかと、不安になる。
だからちょっとだけ笑みが引きつる。
まもなくバレンタインディを迎える。
和希としては、張り切りたいというのもよく理解できる。
だが、チョコレートを買うのではなく、チョコレートを手作りするのでもなく、いきなりケーキに挑戦するとは………なんというか………ちょっと無謀だ。
正直、和希はこれまでお菓子作りはもちろんのこと、料理にも手を出したことはない。
学校の調理実習ですら、あまり関わらないようにしていたくらいだ(有り体にいればほとんど傍観者になっていた。せいぜい野菜の皮むき、しかも簡単なタマネギあたり)。
つまりあまり料理のセンスがない、と言える。
それが、いきなりチョコレートケーキとは。
しかしながら、可愛い和希の嬉しそうな表情を消したくはないから「和希には難しいんじゃないかしら」とも言いたくない。
だから、千奈は和希に協力する。
和希のケーキ作りが失敗しないように。
和希のために。
