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こころびより

サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?

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2009 
June 17
明志を和希に紹介するのは、半分乗り気じゃなかったけれど、もう半分では乗り気だった。
乗り気じゃなかったのはもちろん、和希の性格からして明志は絶対に好みじゃないとわかっていたからだ。
明志は自分がモテる男であることを自覚していて、それを全面に押し出して自信満々で、またそれが人を惹きつける魅力になっている部分もあるのだけど、対和希の場合、それは全くの逆効果なのだ。
和希は顔のいい男にはろくな奴がいないと思っている節があって、そしてかなり頑固にその意見を譲ることはない。
だから、時田さんに好意を抱いたのはかなりすごいことだと思う。
そう、和希は時田さんを好きだし、そんな和希に他の男を紹介するのはもってのほかだともわかっていたのだ。
だけど、その反面、和希に新しい出会いを用意したいと思ったのだ。
和希は春からのこの半年の間、見ていて痛々しかった。
何があったのか詳しくは知らない。
ちーちゃんはだいたいのところを知っているみたいだけど、話してはくれなかった。
ただ、和希に哀しいことがあったと気づいただけ。
その哀しいことが、時田さんと会えなくなったことにあるというのはすぐにわかった。
もともと、和希の口から時田さんの話題が出ることはあまりなかったけれども、それまで以上に時田さんのことについて触れないようになった。
それは、ちーちゃんも同じで、出来るだけ時田さんのことを考えさせないようにと気を遣っていた。
そういう状況だから、わたしだって察する。
今の和希には、時田さんのことは触れてはならないことなのだ、と。
和希は今までのように笑ったし、喋ったし、変わらないようにしていた。
だけど、どこか違った。
2年生になってクラスが離れたから、和希の様子を窺う機会も前ほどじゃなくなったけれど、それでも気づいたくらいだから相当無理していたんだと思う。
そんな和希をどうにかしたかった。
和希が反発するとわかっていても、どうにかしたいと思わずにいられなかった。

明志を紹介することになった経緯は単純。
明志とわたしと、もう一人、達紀の三人は家が近所同士の幼なじみで、今でもよく一緒に誰かの家に集まってだらだらと過ごしている。
多感なお年頃なのに、男女の隔たりとか外聞とか気にしないでいられる奇特な関係だと周囲には言われるが、当人たちは至って幼い頃のままだ。
異性として意識し合うこともなければ、同性のいがみ合いもない。
何でも相談するし、つい何でも話してしまう。
そんなわけで、和希のことをついつい愚痴っぽくこぼしてしまったのがきっかけだった。
辛い恋を忘れるには新しい恋だと、いつの時代の台詞なのかというようなことを言ったのが明志で、自らその新しい恋の相手に志願した。
最初はもちろん、和希にはダメだと反対した。
実は明志の前にも何人か紹介しようと試みて、ことごとく突っぱねられていたのだ。
でも、明志は聞き入れないし、それどころかより熱を上げてしまったらしい。
障害のある恋のほうが燃える、というやつだ。
これ以上熱を上げてしまっては、和希は更に嫌悪すると考えて、その辺で諦めた。
それに、本当に嫌だと思うなら和希はこてんぱんにやっつけるだろうし、そうすればそれで諦めるかもしれないし。
もしかしたら、万が一ってこともあるかもしれないし。
なんたって、無理をしていない和希を見ることが出来ればそれでいいんだから。

だが、予想通りというか、期待を裏切らないというか、和希はものすごい勢いで明志を否定した。
あの嫌い方は、明志が哀れに思えたほどだ。
しかしながら、明志はそれくらいではへこたれなかった。
それどころか、やっぱり熱は上がっていく一方で、今までは適当に女の子たちと遊んでいたくせに、それすら放り出して、和希をいかにして落とすか、ということばかりを考え始めた。
正直、この展開は予想していなかった。
まさか明志がハマるなんて思っていなかったから。
明志の想いが真剣なものなのかまではわからなかったけれど、簡単に明志は諦めるつもりはないらしい。
そのしつこさに和希は折れるのか、どうなのか。

結果として、和希は実力行使の上で完全否定をしてきた。
その日は、クラスメイトの恋愛相談という名の情報伝達に付き合っていて帰りが遅くなった。
瞬く間に落ちていく夕日はもう夜に押されていて山の端に消えようとしていた。
早く帰ろうと正門から続く坂を早足で下っていくと、その先に黒い塊があってぎくっとした。
よくよく見るとそれは人がしゃがみ込んでいて、しかもその人とは明志だった。
「どうしたのよ」
声を掛けたら、陰になった顔を上げてこちらへ向けた。
珍しく弱々しい笑みである。
「あの子、パワフルすぎる………」
「和希のことよね。だから言ったじゃない。ちょっとやそっとじゃ手に負える相手じゃないよって。何されたのよ」
「回し蹴り」
返答に困った。
空手を始めたのはしっていたが、それを行使するほどまで抵抗するとは。
よほど、嫌だったに違いない。
そして、それだけ明志もしつこく迫ったのだろう。
(でも、ちょっとやりすぎよ………)
こんなやつでも、長いつきあいの幼なじみである。
少しくらいかばいたくもなる。
だが、内心でかばわれているとは思っていない明志は、ゆっくりと立ち上がると、にいっと自信満々な笑みを取り戻した。
「やっぱり、いいなぁ、和希ちゃん」
呆れた。
この男はもう理解の範疇を超えている。
回し蹴りまでされて、何故まだいいと言えるのかわからない。
「………あんた、もしかしてMッ気あるんだ。今までSかと思ってたけど、実はMだったんだ」
「和希ちゃんのためなら、MにだってSにだってなるさ」
あっけらかんと言う明志にもうため息しか出ない。
そして、和希に紹介したことを心から後悔した。
もし、この先、和希が時田さんとの仲を復活させたりしたら、とんでもなく面倒なことになりそうなことが予想できたからだ。
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プロフィール
HN:
アヤ
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性別:
女性
自己紹介:
素人物書き。表の顔はしがない事務員。熱し易く冷め易いが、物書きだけはずっと続いている。長年読書が趣味だといいつづけてきたが、本を読むことよりむしろ本が好きなだけではないのか?ということに最近気付いたところ。
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