忍者ブログ

こころびより

サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?

  • « 2026.04. 
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  •  »
2026 
April 09
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2011 
April 11
「お姉ちゃん、わたし失敗したかもー」
珍しく気弱な発言をしながら、亜美はベッドの上の枕を弄んでいる。
「何が」
私は、自分の勉強机の前にある椅子に亜美の方を見て座っていた。
亜美が、私に何か相談してくるということ自体珍しい。
「和希………ってわかるよね。友達の」
「ええ」
「あの子、今、ものすごく無理してて、見てらんないの。だから、なんとかしてあげたくて」
「亜美。話が見えない」
亜美の言葉を遮ると、亜美は慌てて状況説明をした。
「あ、えっとね。時田さんと会えないんだって言ってて………。それで暫く元気がなかったんだけど、今はいつか会うからって、空手とか始めちゃってるんだけどね。それが、なんで時田さんにつながるのかはわかんないんだけど、無理して頑張ってるのが見え見えなの。本当はすぐに会いたいくせに、ずーっと我慢してる」
部屋に入ってくるときから妙に遠慮がちだったとは思っていたが、そういう話だったとは。
亜美は私が時田さんのことを好きだということは、知っているはずだ。言葉にしたわけではないが、そういうことろを察することには長けている。
それでも、私によりにも依って時田君と彼女のことを持ち出すとはいい度胸。
幾分、遠慮がちだったところに誠意を見いだすべきなのかも知れないけど。
確かに、卒業して半年が過ぎて、時田君とは一度も会わないままだったし、今は想い出になりつつある。
想いを伝えることができただけでも達成感があったのかもしれないし、適うことのない想いだという自覚もある。
だから、割と過去のことになってはいるけれども、だからといって、好きだった人のそういう話を完全に冷静に聞くことが出来るほどではない。
それでも、平静を装うけれど。これは女の意地だ。
「もう、見てられなくて」
「それで?」
「で、気を紛らわせるっていうか………他のことに夢中になれば、楽になれるのかもと思って、明志のこと紹介しちゃったんだ」
「馬鹿じゃないの!?」
思わずそんな言葉で突き放していた。
「そ、そんなに言われなくても、わかってるよ! だから失敗したって………」
「そんなの、紹介するとかいう前に気がつくでしょう! 会いたくて会いたくて仕方ないのを我慢してるところに、他の男の人を紹介されてふらつくわけないでしょ!」
「それはわかんないじゃん! 辛いときだからこそ、優しくされたらぐらっとくることだってあるよ!」
「それは人に依りけりでしょ。その子はそういうタイプの子じゃないってことくらい、わかってなかったの?」
「………でも、なんとかしてあげたかったんだもん!」
思わずため息が洩れる。
友達を思いやる気持ちは大事だとは思うが………何で、そんな判断を誤るようなことをしたのだろう。
しかも、紹介したのが明志というのがありえない。何を血迷っていたのか。
「なんで、会いたいのに会うのを我慢するの? 全然わかんない。あんな辛そうなの、見てらんないよ。それなら辛そうなところ見せないでよ」
それは亜美の本心だ。多分、彼女には言えない本心。
「………………こういうのは見守る以外ないでしょ。当人が決着をつけなきゃ、どうしようもないことよ」
「わかってるよ! わかってるから、歯痒いんじゃない」
ぎゅううううっと、亜美は力一杯枕を抱きしめた。
やり方は間違っているが、友達を思う亜美が可愛い。
「………お姉ちゃんは、時田さんと会ったりしてないんだよね」
「生憎ね」
大学が違ってからは、本当に遭遇することがない。
「そっか………時田さん、どうしてるんだろう。どう思ってるんだろう」
「そんなこと、本人に訊きなさいよ」
「意地悪ー」
上目遣いで睨まれても怖くない。
「それより、失敗したのって明志のことなんでしょ。明志のことだから、のめり込んじゃったんじゃない?」
「当たり」
はぁっと今度は深い吐息。
「もうどうしよう」
「それは自分が蒔いた種なんだから、どうにかしなさい。それこそ、明志が飽きるか、こっぴどく振られるか、痛い目を見るかしかないと思うけどね」
「そうだよねぇ………」
そしてまた深い深いため息を吐き出して、横にごろんと転がった。
「達紀には相談したの?」
「した。バーカ、知るか、って言われた」
ああ。達臣の気持ちがよくわかる。
人の恋愛には敏感なくせに、自分の恋愛にはとことん疎い妹。
お節介を焼いている場合じゃないだろうに。
「………何笑ってるのよー」
「何も?」
知らず緩んでいた口元を引き締め、亜美に背を向ける。
「ほらもう。私も暇じゃないんだから、話が終わったら出て行きなさい」
「冷たいー」
それでも、渋々と亜美は部屋を出て行った。
本当に、世話の焼ける妹だ。
だけど、そこが可愛いところでもある。
時田君と会う予定はない。
だが、もし見かけることがあったら、亜美の気持ちを軽くするための手伝いはしてあげようか。
PR
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11
プロフィール
HN:
アヤ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
素人物書き。表の顔はしがない事務員。熱し易く冷め易いが、物書きだけはずっと続いている。長年読書が趣味だといいつづけてきたが、本を読むことよりむしろ本が好きなだけではないのか?ということに最近気付いたところ。
ブログ内検索
QRコード
アクセス解析

Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP

忍者ブログ[PR]