こころびより
サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?
April 22
「………良かった」
初詣を終えて、神社から階段を下りてきたところで、和希たちを見送った。
真っ先に口から出て来た言葉がそれだった。
和希を誘って二人で初詣に出かけるつもりだった。
ちーちゃんにも声を掛けたけど、お正月は挨拶回りとかあって忙しいからって断られたんだよね。
で、和希と二人きり。
二人きりってことにちょっと不安もあったけど、でも、気晴らしになればいいしって家を出たら、あろうことか明志と遭遇しちゃった。
出かけるのかって訊かれて頷いて、初詣だって答えたら、付いていくって。
この辺の鼻のきき具合は半端じゃない。
女の子のことなら、怖いくらい勘がいい。
一緒に行くのが和希だっていうのはあっという間にばれてしまった。
絶対、和希が嫌がるのはわかってたけど、ちょっとだけ助かるかも、なんて思って連れてっちゃった。
和希を元気づけたいのも、どうにかしてあげたいのも本当だけど、空元気の和希の傍にいるのは少しだけ疲れる。
無理しないで、なんてことも言えないし、元気出して、なんても言えない。
だって、和希は無理してないし、元気だって応えるから………。
だから、明志が一緒だって思ったら、それが紛れるかなぁって。
90%の不安と、10%の期待を持って待ち合わせの場所に向かったら、現れた和希には、時田さんが一緒についてきてた。
つまり、よりを戻したってことなのよね。
冬休みに入ってから、何かしらの動きがあったってことよね。
良かった、って思った。
和希は、本当に心から笑っていたし、そこには無理も何もなかったから。
時田さんも、和希のことを傍で優しくエスコートしてるし、いいなぁってちょっと見とれちゃったよ。
そういえば、二人が並んでるのを見るのって、実は初めてなんだよねぇ………。
「あれが、彼氏?」
隣に突っ立っていた明志がぽつりと零した。
「あー………そうだね」
明志のことを忘れてたわけじゃないけど、これはさすがにフォローをしなくてはならない。
「そんな言うほど、イケてるわけじゃないじゃん」
負け惜しみにしか聞こえないけど、自分に自信のある明志にとっては別に負け惜しみではなくて、本気でそう思ってることを知っている。
「だけど、本当にもう望みはないよ」
残酷な言い方かもしれないけど、明志にははっきり言った方がいい。
「そんなのわかんねーじゃん」
にやりとつり上がる口元。
本当に、諦めるということを知らない。
「今は付き合ってても、その先はわかんないだろ」
「別れるまで待つって? いつになるかわかんないのに? というか、そもそも別れるとも限らないわけでしょ」
「別れさせたっていいんだよ」
何だろう、この自信。なんかちょっと腹が立ってきた。
「あんた、最低。せっかく幸せになったのに、そんなぶちこわしにするようなこと考えてるなんて」
「最低? 自分の気持ちに正直なだけだろ」
「でも、和希にはそれは迷惑なことなんだよ。好きな子が嫌がることをするっていうのが最低だっつってんの!」
自分の気持ちに正直なところも、前向きすぎるところも、明志のいいところだと思っていたけど、なんでだろう、今の明志だとそれがいいところに見えない。
「じゃあ指くわえて見てろってのか」
「そうするしかないじゃん! それが出来ないんなら、あんたこそすっぱり和希のこと諦めなさいよ! 最初から脈がない事なんてわかってたでしょ!!」
明志との付き合いのほうがずっと長い。だけど、今は和希の味方をしたい気持ちでいっぱいだ。
あんなふうに幸せそうに笑ってる和希を見たのは、初めてと言ってもいいくらいだったし、今、本当に笑っていられる和希を見て、ただただ安堵した。
空元気も、作り笑いの和希も、もう見たくなんてない。
せっかく取り戻した和希の本気の笑顔をぶちこわすようなことだけは避けなければ。
「じゃあ、なんで紹介なんかしたんだよ!!」
明志が言葉を荒げた。
返す言葉を見失う。
明志が怒りを顕わにしていた。
こんな明志を見るのは、いつ以来? 初めてかもしれなかった。
「お前があの子を元気づけたいって言ったから、なんとかしてやろうって思ったんだぞ!!」
「で、でも! 和希にはあんたは向かないっても言ったでしょ!! 強引に入り込んできたのはそっちじゃない!」
「そう言いながら、どっかで期待してただろうが! 俺が気付いてなかったと思うなよ!!」
また、何も言い返せなくなってしまった。
それは、本当のことだったから。
「俺は、あの子のこと、本気で好きだった。なんとかしてあげたいって、そう思ってたよ」
声のトーンを落として、明志はそう言うと踵を返す。
「明志!」
「寄り道して帰る。お前は先に帰れよ」
拒絶している背中に、それ以上近寄れなかった。
わたしは、何もかも失敗したんだ。
和希をどうにかしたいと思った気持ちは本物だったけど、何にもならなかった。
結局、和希は自分でどうにかしたし。
わたしは、ただ―――明志を傷つけただけ。
明志が、そんなに本気だなんて気付いてもいなくて。
本当に最低なのは、わたしだ―――。
