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こころびより

サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?

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2026 
April 08
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2012 
March 11
「行こうか」
そう言って、少しだけ先に歩き出すのは勇也のほう。
和希は一歩分だけ遅れて足を踏み出す。
すぐに追いついて、勇也の左手に自身の右手を滑り込ませてくる。

その瞬間が、すごく好きだ。

勇也よりほんの少しだけ冷たい和希の手のひらと、勇也の手のひらが触れ合う。
滑り込んできた手をしっかりと握り締めると、柔らかい手が応える。

こうして手の中に和希の手をすっぽりと納めてしまえることに、愛しさを感じずにはいられない。
それだけの大きさしかない手が、勇也に幸せをもたらす。
この手を守りたいと思う。
手だけじゃない、和希の全てを守りたいと思う。
和希は守られるだけは嫌だと、自分の身は自分で護るからと、そう強く言う。
それでも、守りたいと思う気持ちが無くなるわけではない。

隣を歩く和希にそれとなく顔を向けると、それに気付いて微笑む。
つられて微笑む。

やっと、手に入れた幸せな時間。
一度は手放したこの手を、二度と手放さない。

「どうしたの?」
黙って見つめている時間が長かったのか、居心地が悪くなったようでほんのり照れながら和希が口を開く。
「どうもしないよ」
そう言った勇也は、次の瞬間、和希の唇にその唇で軽く触れていた。
自分でも、衝動的な行動で驚いたくらいだ。
こんな公道で、まさかキスをするなんてことを、自分が。
和希の驚きはそれより後に訪れたようで、暫くきょとんと勇也の目を見上げていた。
何が起こったのかを把握した後、真っ先に顔を赤くする。
「ちょっ………なんで、こんなとこでっ………」
するりと手が勇也の手の中から離れる。
触れたばかりの唇を、その手が隠す。
それがしてはならないことをしてしまったという念を勇也に抱かせて、思わず「ごめん」と呟いていた。
「こんな、不意打ちみたいなの、ずるいよ」
うつむき加減で、目だけを勇也に向ける。
「時田さんとの、初めてのはもっと………ちゃんと」
それ以上は勇也の顔すらもう見ずに足下へと落とされる。
それは、勇也のことを拒否したのではなくて。
「ごめん」
この謝罪の言葉は、確信犯としてのものだ。
公道であるとかもう関係なかった。
愛しさから突き上げてくる衝動を抑える術を見つけられなかった。
肩と背中に空いた腕を回して引き寄せる。
「………っ」
和希が息を呑む。
「あんまり、可愛いこと言わないで貰えると助かるんだけど」
腕の中にある和希の体に緊張が走るのがわかる。
手放すことを物寂しく感じながら、その体をそっと解放する。
真っ先に見た和希の顔はこれ以上無く真っ赤だった。

まだ、自分の衝動をさらけ出すには早そうだ。

「行こうか」
もう一度言って歩き出す。
今度は、先に和希の手を取った。
その手は、勇也よりずっと熱かった。
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プロフィール
HN:
アヤ
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性別:
女性
自己紹介:
素人物書き。表の顔はしがない事務員。熱し易く冷め易いが、物書きだけはずっと続いている。長年読書が趣味だといいつづけてきたが、本を読むことよりむしろ本が好きなだけではないのか?ということに最近気付いたところ。
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