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こころびより

サイトキャラが日替わりで登場。 過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。 たまに小咄も?

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2026 
April 07
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2008 
January 02
「あ」
仰向けになっていたサトルが、横向きで柚子のほうを向いた。とろとろと眠りに引きずり込まれそうになっていた柚子はその声に、瞼を押し上げる。
「なあに………?」
少しくぐもった声になってしまった。サトルが声に出さずに笑ったのが気配でわかる。
「や。今はいいや」
「何よ………」
ちょっとだけムッとしたが、はっきりと声には現れなかった。
「うん。いずれわかることだし。やっぱ今は内緒」
サトルはごろりとまた仰向けになった。その動きで柚子にかかっていた掛け布団がサトルのほうへ引き寄せられたので、引っ張り返した。

3月は、決算月でどこの部署もバタバタしている。監査室とて例外じゃない。むしろ監査室は経理部と同じくらい忙しくなる。
だからなのか、監査室の人員が異動になる場合は4月半ばを過ぎてから辞令が出される。今年もそうだった。
「え? もう?」
辞令の話を聞いたときに、真っ先に柚子はそう言っていた。
今回異動となったのは柚子ではなく、涼二だった。
涼二は一年前に異動して来たばかりで、ここではまだ新参者なのである。
確かに、この部署は長く勤務するところではない。仕事の内容からして、他の部署よりも早く人員が入れ替わる。
それでも、通常は古参の人から異動になるものなのに。
それだけ涼二は上層部の期待を背負っているのか。
(まさか、私とのことのせいじゃないよね………)
涼二に告白されてそれを断ったという経緯が柚子との間にはある。だが、その後はそれまでどおりに同じ監査室の仲間として付き合ってきた。柚子の気持ちも、それ以上に涼二の気持ちも、それまでと同じとはいかなかったけれど、表面的には何ら問題なかったはずだ。それぞれの気持ちの中にあるものを仕事上に持ち込むほど、二人は幼くはなかったから。
しかし、こうも早い異動だとちょっと勘ぐってしまうのもまた事実だ。
異動の話は室長から先に聞いたが、その後本人からも聞いた。
「まさか、俺が先に異動するとは思ってなかったな」
「私も。というか誰だってそう思ってなかったと思います」
「だよねぇ」
涼二は苦笑を浮かべている。
「ま、これも会社の意向なんだから大人しく従いますよ。もう少し監査室にはいたかったんだけど。4月過ぎたからって安心してたらダメなんだよね、ここは。不意打ちをくらう」
まずは監査の書類を纏めてから、引継書を作らないといけないな、などとこれからの仕事の運びを指折り確認している。
「後任は決まってるんですよね?」
「まだ聞いてない?」
「はい」
「優秀なやつだから安心していいよ。俺も仕事任せやすいし」
「安倉さんは知ってる人なんですか?」
「うん。もしかしたら、丸木さんも知ってるかも。結構有名人らしいから。ちなみに俺はそいつに引継ぎするのは2度目。ここへ来る前も引き継いできたんだよ」

別に社内恋愛は禁じられているわけではないが、周囲にいろいろ言われるのは煩わしいからということで、サトルとの関係は秘めている。サトルは気にしないのだが、柚子は困るだろうと気を遣ってくれたのだ。最近では柚子も別にサトルとのことが明らかになっても構わないと思っているが、それをいちいち自分から周囲に言って回るのも変な話なので、そのままにしている。
そんなわけで、サトルと会うのは週末だけにしているのだが、今日に限ってはいてもたってもいられなくて、夜ご飯を一緒に食べようと誘いのメールを入れた。
少し遅くなるけどそれでも良ければ、と返ってきたのでそれでいいとまた返した。
会えたのは8時半を過ぎてからだった。
街中で落ち合うやいなや、柚子はサトルに詰め寄った。
「監査室に異動になるの!?」
「なんだ。もうばれちゃったか」
「本当なんだ………」
柚子は呆然と呟く。
「嫌?」
サトルが柚子の顔を覗き込んでくる。
「嫌じゃないけど………驚いたから」
「これで結婚したら、一日中一緒ってことになるね」
「え?」
さらりと言われたので、聞き返してしまった。
「仮定の話だよ」
サトルは悪びれることなく、受け流してしまう。
「でも、ほぼ毎日一緒にいることになるね。楽しみだな」
本当に楽しみだと思っているようで、口元には笑みが浮かんでいる。
つきあい始めて半年になるが、まだサトルが楽しいと思うポイントがよく掴めない。
「あと半月もしたら、柚子さんと机を並べているわけだ。うん、楽しみだ」
サトルは繰り返した。
「そうね………私も何だか楽しみになってきた」
「何だ。今まで楽しみじゃなかったの?」
「うん。それより、嬉しかったと思うのが先だった」
「へぇ」
一瞬、虚を突かれた表情をしたサトルだったが、すぐににんまりと笑った。
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プロフィール
HN:
アヤ
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性別:
女性
自己紹介:
素人物書き。表の顔はしがない事務員。熱し易く冷め易いが、物書きだけはずっと続いている。長年読書が趣味だといいつづけてきたが、本を読むことよりむしろ本が好きなだけではないのか?ということに最近気付いたところ。
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