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  <title type="text">こころびより</title>
  <subtitle type="html">サイトキャラが日替わりで登場。
過去話や未来話・裏話などが書かれていたりします。
たまに小咄も？</subtitle>
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  <updated>2006-02-14T23:51:58+09:00</updated>
  <author><name>アヤ</name></author>
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    <published>2023-08-03T23:58:06+09:00</published> 
    <updated>2023-08-03T23:58:06+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>高井和希</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[格好良すぎて困る。<br />
思わず見とれてしまうのもしょうがない。<br />
だけど―――自分にもっと身長があれば良かったのに、なんて、こんなこと初めて思った。<br />
<br />
今まで隣に並ぶのを躊躇ったことなんてなかったのに。<br />
なんでだろう。<br />
<br />
今日は花火大会。<br />
張り切って浴衣で出かけよう！　と誘って、一緒にレンタル浴衣に着替えて。<br />
そこまでは良かったのに。<br />
<br />
あたし、浴衣が似合ってない。<br />
なんだか、子どもっぽくなってしまった。<br />
大輪の朝顔があしらわれた、涼やかな水色の浴衣。<br />
水色に合わせた抑えたピンクの帯。<br />
可愛い色合いの浴衣は―――。<br />
<br />
「和希？」<br />
<br />
勇也はあたしの表情に敏感で。<br />
あたしはあたしで感情を隠すのが下手で。<br />
<br />
本当は楽しみで仕方なかった花火大会なのに、勇也もそれを知っているからこそ、今曇っているあたしの表情に戸惑っているのもわかってる。<br />
わかってるけど、どうしようもなくて。<br />
<br />
こんなの、らしくない！　ないけど！　ないからこそ、なんだかもう泣きそう。<br />
<br />
「和希」<br />
<br />
俯いて立ち止まったあたしの手を勇也が優しく取り上げる。<br />
勇也の手が今日はいつもより熱い。<br />
<br />
<br />
「花火、会場近くじゃないけど、静かに見られるところに行こうか」<br />
<br />
勇也の言葉に顔を上げる。<br />
柔らかい表情の勇也がそこにはいた。<br />
<br />
「俺としてはあんまり行きたくないんだけど&hellip;&hellip;&hellip;まぁ邪険にされることはないし、静なのは間違いないしね」<br />
<br />
そう言って、花火大会の会場へ向かう人の流れに逆らうようにして、大通りまで出てくるとタクシーに乗り込む。<br />
どこに行くのかと思っていたけど、途中で気が付いた。<br />
板橋のおじいちゃんのところだ。<br />
<br />
確かに高台にその屋敷は建っていた。<br />
ただ、花火大会の会場である港が一望できたような覚えはない。<br />
<br />
「海が見えるわけじゃないけどね。高く上がった花火はちゃんと見えるよ」<br />
<br />
タクシーに乗る前に事前連絡をしていたからか、立派な門の前に降り立つと、くぐり戸をするっと通り抜け、施錠されていなかった玄関から屋敷内へ足を踏み入れることが出来た。<br />
<br />
「意外と早かったですね。花火が上がるまでにはまだ時間がありますから、何か軽く口にされますか？」<br />
<br />
下駄を脱ぐより先に、滝川が音もなく現れる。<br />
<br />
「こんばんは」<br />
「ようこそいらっしゃいました。板橋もお待ち申し上げておりましたよ」<br />
<br />
頭を下げると、微笑みながらそう言ってくれる。<br />
逆に勇也は苦笑いだ。<br />
<br />
「挨拶くらいはちゃんとしますよ。和希はお腹空いてる？」<br />
「ううん」<br />
「じゃあ、挨拶したら部屋に引きこもろう。邪魔はされたくないし」<br />
<br />
勇也は有言実行な人だ。<br />
本当に挨拶だけして、さっさと屋敷に用意されている自室に和希を引き連れていく。<br />
ちょっとおじいちゃんが可哀想になる。いつものことだけど。<br />
<br />
「浴衣だからあんまりくつろげないかもしれないけど」<br />
<br />
ここで過ごす機会も多くなったからか、初めてここへ着たときよりもものが増えた部屋。<br />
クッションもその一つで、和希が座りやすいように縁側に設えてくれた。<br />
<br />
目の前には庭と芝垣があるが、視界が開けているわけではない。鬱蒼とした森まではないにしても、視界を遮るくらいには木立が続いている。外からこちらの様子が窺えないということは、こちらからも外の様子は見えないのだ。<br />
本当に花火は見えるんだろうか。<br />
<br />
「ね、和希」<br />
<br />
隣に座る勇也がまた手を握ってくれる。<br />
さっきは握られるままだったけど、和希のほうからも握り返す。指を絡めて、いわゆる恋人つなぎだ。<br />
<br />
「浴衣、気に入らなかったわけじゃないよね。何が気になったの？」<br />
<br />
ズバリと切り込まれてしまった。<br />
浴衣に原因があるのは、わかりやすかったとは思うけど。<br />
<br />
「浴衣、似合ってるし。可愛いし、人に見せびらかしたいくらいだったんだけどね」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;似合ってないもん」<br />
「え？」<br />
「勇也がカッコイイのはもうわかりきってることだし、どうしようもないし、ホントはあたしだってみせびらかしたいくらいだもん。けど&hellip;&hellip;&hellip;あたし、横に並んだらすごく子どもっぽく見えちゃったんだよ」<br />
<br />
ああ。言ってたら、また泣きたくなってきた。<br />
情けないったら、もう。<br />
勇也から目をそらして、握り合った手をじっと見つめるしかなくなる。<br />
<br />
「和希」<br />
<br />
少し、強い声。<br />
<br />
「和希は時々自分の事がわかってないね」<br />
「そんなことない」<br />
「あるよ。俺が可愛いって言ってるのに、信用してない」<br />
「そんなの贔屓目なだけだよ」<br />
「贔屓目を含んでもなお、可愛いんだよ。それにね、子どもっぽいなんて、まったくないからね。わかってる？」<br />
<br />
ぐいっと繋いだ手を引かれて、何の抵抗もできないまま勇也の胸に体ごと引き寄せられる。<br />
空いたほうの勇也の手に頬と顎を持ち上げられて、そのまま唇が重ねられる。<br />
いつもより少し長く重ねた唇が離れたときに、熱い吐息が零れる。<br />
その唇を勇也の指がそっと撫でる。<br />
<br />
「子どもにこんなことしないからね。なんならもっとしたいんだけどね」]]> 
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    <author>
            <name>アヤ</name>
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    <published>2023-07-24T00:10:26+09:00</published> 
    <updated>2023-07-24T00:10:26+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>時田勇也</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[海を選んだのは失敗だったかもしれない。<br />
<br />
夏なのでデート先に海を選ぶのは必然だ。<br />
日に日に暑さは増していくし、水は冷たくて気持ちが良いし。<br />
何より、夏特有の開放感を味わえる最適の場所だ。<br />
ただ、同じように思う人が多いというだけで。<br />
海の中も浜辺も広い海の家も人ばかりだ。<br />
<br />
とはいえ―――。<br />
<br />
「行こっか！」<br />
<br />
隣の和希が笑顔で見上げてくる。<br />
<br />
「そうだね」<br />
<br />
せっかく来たのだから楽しむより他はない。<br />
それに、さっさと水の中に入るに限る。<br />
暑いから―――だけではもちろんない。<br />
<br />
人を避けながら海へと入っていく。<br />
脇に抱えていた大きな浮き輪を和希に渡すと、上手に上半身と両足を預ける。勇也は浮き輪ごと流されてしまわないように手を掛けておく。足がついて脇より上は海上にあるくらいの深さではあるが用心に越したことはない。<br />
<br />
海水は冷たく感じるし、海風もあってやはり陸上よりは過ごしやすい。上空からの太陽は容赦ないのは変わりないが。<br />
<br />
「気持ちいい～」<br />
<br />
体勢を変えて、体の半分を海中につけた和希は浮き輪に預けた腕に顔を乗せて、幸せそうに呟く。その横顔がたまらなく可愛い。<br />
つい、触れたくなって人差し指の側面で、その頬を撫でた。<br />
<br />
「何かついてた？」<br />
<br />
和希の目が勇也を捉える。体の芯が震える。<br />
和希と特別な関係になってから半年は経つというのに、未だに和希の視線一つで気持ちが昂ぶる。毎回というわけじゃない。不意にそうした時が訪れるのだ。<br />
<br />
たぶん、これは優越感と無関係ではないだろう。<br />
彼女の特別な視線は自分にだけ向けられるのだという優越感。<br />
<br />
和希は気付いていないが、いくつかの無遠慮な視線がずっと彼女を追っている。<br />
それが和希の魅力のせいだとわかっているが、面白いわけがない。<br />
早く海に入りたいと思ったのももちろんそのせいだ。<br />
和希には見せびらかすつもりなど一切無く、自分に似合う水着を着ただけなのだろうが、それがどれだけ異性の目に刺激的なのかを全くもって意識していない。<br />
勇也としては可愛い魅力的な彼女が、自分の為に張り切ってくれているのが嬉しいわけがない。ただそれを人目に晒すのはいただけない。<br />
<br />
「何もつかないようにしただけだよ」<br />
「何それ」<br />
<br />
少しだけ怪訝そうな表情になる和希に微笑む。<br />
和希は浮き輪から少し身を乗り出して、勇也の肩につかまるとその頬に軽く唇で触れる。<br />
こんな人が多くいる場所で和希のほうからそんな行動に出るとは予想だにしておらず、何の反応もできないでいる勇也に、にんまり、としか言い様のない笑みを見せてくる。<br />
<br />
「あたしも何もつかないようにしただけ」<br />
「え？」<br />
「あのね、ずっと視線を集めてるの、勇也のほうだからね」<br />
<br />
―――これも夏がもたらす開放感の一つなのだとしたら、悪くない。<br />
が、あんまり煽らないでもらえるだろうか。<br />
<br />
今後はプライベートビーチとかプールの貸し切りとか考えた方がいいかもしれない。色んな意味で。]]> 
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            <name>アヤ</name>
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    <published>2020-10-06T21:50:32+09:00</published> 
    <updated>2020-10-06T21:50:32+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>高井和希</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[成人式当日。<br />
<br />
特別な装いをするその日、式典に出席する前にどうしても逢いたいと約束をしていて本当に良かった。<br />
今日逢えなかったら、すごくすごく後悔するところだった。<br />
<br />
待ち合わせの場所に時間より前に着いて、勇也を待ち受けるつもりだったのに、勇也のほうが先に来ていた。<br />
慌てて駆け寄ろうとしたけど、その立ち姿が眩しすぎて立ち止まってしまう。<br />
<br />
スーツ姿&hellip;&hellip;&hellip;スーツ！！！<br />
格好良すぎる～～～(≧&nabla;≦*)//<br />
ヤバイ、やばすぎる！<br />
その上に、トレンチコートとか！！<br />
<br />
似合わないわけがないんだけど！<br />
大体、何を着たって似合うんだけど！！<br />
<br />
スーツってすごい&hellip;&hellip;&hellip;。<br />
<br />
約束の時間まではまだ10分ちょっと。<br />
寒いからだと思うけど、コートのポケットに入れていた手を出して、腕時計で時間を確かめる仕草がまた&hellip;&hellip;&hellip;！<br />
やだもう、ずっと見ていられる！！<br />
<br />
けど、待たせるのも申し訳ない。<br />
<br />
「勇也！」<br />
<br />
名前を呼んで、一気に駆け寄った。<br />
気付いた勇也が、笑顔で迎えてくれる。あああホントに眩しい&hellip;&hellip;&hellip;。<br />
<br />
「おはよう」<br />
<br />
いつもの挨拶なのに、なんで今日は特別に聞こえるんだろう。スーツマジック？<br />
<br />
「なんだか、顔が赤いけど大丈夫？　熱とか&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「大丈夫！　勇也が格好良すぎて興奮してるだけだから！」<br />
「え&hellip;&hellip;&hellip;あ、そうなの？」<br />
<br />
戸惑った笑みを浮かべているけど、それでも嬉しそうなのがわかる。<br />
<br />
「もっとよく見せて！」<br />
<br />
前に回り込んだのち、少し距離を取って真正面から勇也の姿を捉える。<br />
<br />
黒地にそっとストライプが入ったトレンチコートの下は、ネイビーのスリーピーススーツ。<br />
よく見ると、大きめのチェック柄が入っている。<br />
ネクタイは無地のエンジで、同じ色のポケットチーフがいいアクセント。<br />
ストレートチップの黒い革靴も似合っている。<br />
<br />
とてもとても、勇也らしい。<br />
<br />
「あんまりまじまじと見られるのは恥ずかしいんだけど&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
<br />
本気で居心地が悪そうだ。<br />
だけど、まじまじと見ないで居られるわけがないじゃない。<br />
<br />
かっこいいんだもん！！！<br />
<br />
「もっと見てたい」<br />
「ごめん、ホントもう無理&hellip;&hellip;&hellip;そろそろ行こう。じっとしてるのも寒いし」<br />
<br />
興奮のあまりすっかり忘れていたが、今朝の最低気温は5℃だったし、日が射しているといって今は真冬なのだ。<br />
ずっと立ちっぱなしだった勇也は冷え切っているに違いなかった。<br />
<br />
「あ、ごめんね！　じゃあ、早めのランチに行こう」<br />
<br />
パタパタと傍に寄って、その手を取ったら指先が冷たかった。<br />
ほんっとうに申し訳ない&hellip;&hellip;&hellip;。<br />
いつもは私のほうが冷たいのにね。<br />
<br />
指を絡めると、その手は勇也のトレンチコートのポケットに誘われる。<br />
冷えた指先が熱を取り戻すじんじんとした心地良さを感じながら、予定していたランチの店へ向かう。<br />
その間に、何度も勇也の横顔を見上げては、にまにまと口元を緩ませながら。]]> 
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    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
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    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/49</id>
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    <published>2012-03-11T03:32:45+09:00</published> 
    <updated>2012-03-11T03:32:45+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>時田勇也</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<font style="font-family:verdana;">「行こうか」<br />
そう言って、少しだけ先に歩き出すのは勇也のほう。<br />
和希は一歩分だけ遅れて足を踏み出す。<br />
すぐに追いついて、勇也の左手に自身の右手を滑り込ませてくる。<br />
<br />
その瞬間が、すごく好きだ。<br />
<br />
勇也よりほんの少しだけ冷たい和希の手のひらと、勇也の手のひらが触れ合う。<br />
滑り込んできた手をしっかりと握り締めると、柔らかい手が応える。<br />
<br />
こうして手の中に和希の手をすっぽりと納めてしまえることに、愛しさを感じずにはいられない。<br />
それだけの大きさしかない手が、勇也に幸せをもたらす。<br />
この手を守りたいと思う。<br />
手だけじゃない、和希の全てを守りたいと思う。<br />
和希は守られるだけは嫌だと、自分の身は自分で護るからと、そう強く言う。<br />
それでも、守りたいと思う気持ちが無くなるわけではない。<br />
<br />
隣を歩く和希にそれとなく顔を向けると、それに気付いて微笑む。<br />
つられて微笑む。<br />
<br />
やっと、手に入れた幸せな時間。<br />
一度は手放したこの手を、二度と手放さない。<br />
<br />
「どうしたの？」<br />
黙って見つめている時間が長かったのか、居心地が悪くなったようでほんのり照れながら和希が口を開く。<br />
「どうもしないよ」<br />
そう言った勇也は、次の瞬間、和希の唇にその唇で軽く触れていた。<br />
自分でも、衝動的な行動で驚いたくらいだ。<br />
こんな公道で、まさかキスをするなんてことを、自分が。<br />
和希の驚きはそれより後に訪れたようで、暫くきょとんと勇也の目を見上げていた。<br />
何が起こったのかを把握した後、真っ先に顔を赤くする。<br />
「ちょっ&hellip;&hellip;&hellip;なんで、こんなとこでっ&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
するりと手が勇也の手の中から離れる。<br />
触れたばかりの唇を、その手が隠す。<br />
それがしてはならないことをしてしまったという念を勇也に抱かせて、思わず「ごめん」と呟いていた。<br />
「こんな、不意打ちみたいなの、ずるいよ」<br />
うつむき加減で、目だけを勇也に向ける。<br />
「時田さんとの、初めてのはもっと&hellip;&hellip;&hellip;ちゃんと」<br />
それ以上は勇也の顔すらもう見ずに足下へと落とされる。<br />
それは、勇也のことを拒否したのではなくて。<br />
「ごめん」<br />
この謝罪の言葉は、確信犯としてのものだ。<br />
公道であるとかもう関係なかった。<br />
愛しさから突き上げてくる衝動を抑える術を見つけられなかった。<br />
肩と背中に空いた腕を回して引き寄せる。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;っ」<br />
和希が息を呑む。<br />
「あんまり、可愛いこと言わないで貰えると助かるんだけど」<br />
腕の中にある和希の体に緊張が走るのがわかる。<br />
手放すことを物寂しく感じながら、その体をそっと解放する。<br />
真っ先に見た和希の顔はこれ以上無く真っ赤だった。<br />
<br />
まだ、自分の衝動をさらけ出すには早そうだ。<br />
<br />
「行こうか」<br />
もう一度言って歩き出す。<br />
今度は、先に和希の手を取った。<br />
その手は、勇也よりずっと熱かった。</font>]]> 
    </content>
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            <name>アヤ</name>
        </author>
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    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/48</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://vbj.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E4%BA%9C%E7%BE%8E_48" />
    <published>2011-04-22T02:11:11+09:00</published> 
    <updated>2011-04-22T02:11:11+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>国立亜美</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>「&hellip;&hellip;&hellip;良かった」<br />
初詣を終えて、神社から階段を下りてきたところで、和希たちを見送った。<br />
真っ先に口から出て来た言葉がそれだった。<br />
<br />
和希を誘って二人で初詣に出かけるつもりだった。<br />
ちーちゃんにも声を掛けたけど、お正月は挨拶回りとかあって忙しいからって断られたんだよね。<br />
で、和希と二人きり。<br />
二人きりってことにちょっと不安もあったけど、でも、気晴らしになればいいしって家を出たら、あろうことか明志と遭遇しちゃった。<br />
出かけるのかって訊かれて頷いて、初詣だって答えたら、付いていくって。<br />
この辺の鼻のきき具合は半端じゃない。<br />
女の子のことなら、怖いくらい勘がいい。<br />
一緒に行くのが和希だっていうのはあっという間にばれてしまった。<br />
絶対、和希が嫌がるのはわかってたけど、ちょっとだけ助かるかも、なんて思って連れてっちゃった。<br />
和希を元気づけたいのも、どうにかしてあげたいのも本当だけど、空元気の和希の傍にいるのは少しだけ疲れる。<br />
無理しないで、なんてことも言えないし、元気出して、なんても言えない。<br />
だって、和希は無理してないし、元気だって応えるから&hellip;&hellip;&hellip;。<br />
だから、明志が一緒だって思ったら、それが紛れるかなぁって。<br />
９０％の不安と、１０％の期待を持って待ち合わせの場所に向かったら、現れた和希には、時田さんが一緒についてきてた。<br />
<br />
つまり、よりを戻したってことなのよね。<br />
冬休みに入ってから、何かしらの動きがあったってことよね。<br />
<br />
良かった、って思った。<br />
和希は、本当に心から笑っていたし、そこには無理も何もなかったから。<br />
時田さんも、和希のことを傍で優しくエスコートしてるし、いいなぁってちょっと見とれちゃったよ。<br />
そういえば、二人が並んでるのを見るのって、実は初めてなんだよねぇ&hellip;&hellip;&hellip;。<br />
<br />
「あれが、彼氏？」<br />
隣に突っ立っていた明志がぽつりと零した。<br />
「あー&hellip;&hellip;&hellip;そうだね」<br />
明志のことを忘れてたわけじゃないけど、これはさすがにフォローをしなくてはならない。<br />
「そんな言うほど、イケてるわけじゃないじゃん」<br />
負け惜しみにしか聞こえないけど、自分に自信のある明志にとっては別に負け惜しみではなくて、本気でそう思ってることを知っている。<br />
「だけど、本当にもう望みはないよ」<br />
残酷な言い方かもしれないけど、明志にははっきり言った方がいい。<br />
「そんなのわかんねーじゃん」<br />
にやりとつり上がる口元。<br />
本当に、諦めるということを知らない。<br />
「今は付き合ってても、その先はわかんないだろ」<br />
「別れるまで待つって？　いつになるかわかんないのに？　というか、そもそも別れるとも限らないわけでしょ」<br />
「別れさせたっていいんだよ」<br />
何だろう、この自信。なんかちょっと腹が立ってきた。<br />
「あんた、最低。せっかく幸せになったのに、そんなぶちこわしにするようなこと考えてるなんて」<br />
「最低？　自分の気持ちに正直なだけだろ」<br />
「でも、和希にはそれは迷惑なことなんだよ。好きな子が嫌がることをするっていうのが最低だっつってんの！」<br />
自分の気持ちに正直なところも、前向きすぎるところも、明志のいいところだと思っていたけど、なんでだろう、今の明志だとそれがいいところに見えない。<br />
「じゃあ指くわえて見てろってのか」<br />
「そうするしかないじゃん！　それが出来ないんなら、あんたこそすっぱり和希のこと諦めなさいよ！　最初から脈がない事なんてわかってたでしょ！！」<br />
明志との付き合いのほうがずっと長い。だけど、今は和希の味方をしたい気持ちでいっぱいだ。<br />
あんなふうに幸せそうに笑ってる和希を見たのは、初めてと言ってもいいくらいだったし、今、本当に笑っていられる和希を見て、ただただ安堵した。<br />
空元気も、作り笑いの和希も、もう見たくなんてない。<br />
せっかく取り戻した和希の本気の笑顔をぶちこわすようなことだけは避けなければ。<br />
「じゃあ、なんで紹介なんかしたんだよ！！」<br />
明志が言葉を荒げた。<br />
返す言葉を見失う。<br />
明志が怒りを顕わにしていた。<br />
こんな明志を見るのは、いつ以来？　初めてかもしれなかった。<br />
「お前があの子を元気づけたいって言ったから、なんとかしてやろうって思ったんだぞ！！」<br />
「で、でも！　和希にはあんたは向かないっても言ったでしょ！！　強引に入り込んできたのはそっちじゃない！」<br />
「そう言いながら、どっかで期待してただろうが！　俺が気付いてなかったと思うなよ！！」<br />
また、何も言い返せなくなってしまった。<br />
それは、本当のことだったから。<br />
「俺は、あの子のこと、本気で好きだった。なんとかしてあげたいって、そう思ってたよ」<br />
声のトーンを落として、明志はそう言うと踵を返す。<br />
「明志！」<br />
「寄り道して帰る。お前は先に帰れよ」<br />
拒絶している背中に、それ以上近寄れなかった。<br />
<br />
わたしは、何もかも失敗したんだ。<br />
和希をどうにかしたいと思った気持ちは本物だったけど、何にもならなかった。<br />
結局、和希は自分でどうにかしたし。<br />
わたしは、ただ―――明志を傷つけただけ。<br />
明志が、そんなに本気だなんて気付いてもいなくて。<br />
<br />
本当に最低なのは、わたしだ―――。</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/47</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://vbj.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E4%BA%9C%E6%B4%A5%E5%AD%90_47" />
    <published>2011-04-11T00:55:35+09:00</published> 
    <updated>2011-04-11T00:55:35+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>国立亜津子</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<span style="font-family: Verdana">「お姉ちゃん、わたし失敗したかもー」<br />
珍しく気弱な発言をしながら、亜美はベッドの上の枕を弄んでいる。<br />
「何が」<br />
私は、自分の勉強机の前にある椅子に亜美の方を見て座っていた。<br />
亜美が、私に何か相談してくるということ自体珍しい。<br />
「和希&hellip;&hellip;&hellip;ってわかるよね。友達の」<br />
「ええ」<br />
「あの子、今、ものすごく無理してて、見てらんないの。だから、なんとかしてあげたくて」<br />
「亜美。話が見えない」<br />
亜美の言葉を遮ると、亜美は慌てて状況説明をした。<br />
「あ、えっとね。時田さんと会えないんだって言ってて&hellip;&hellip;&hellip;。それで暫く元気がなかったんだけど、今はいつか会うからって、空手とか始めちゃってるんだけどね。それが、なんで時田さんにつながるのかはわかんないんだけど、無理して頑張ってるのが見え見えなの。本当はすぐに会いたいくせに、ずーっと我慢してる」<br />
部屋に入ってくるときから妙に遠慮がちだったとは思っていたが、そういう話だったとは。<br />
亜美は私が時田さんのことを好きだということは、知っているはずだ。言葉にしたわけではないが、そういうことろを察することには長けている。<br />
それでも、私によりにも依って時田君と彼女のことを持ち出すとはいい度胸。<br />
幾分、遠慮がちだったところに誠意を見いだすべきなのかも知れないけど。<br />
確かに、卒業して半年が過ぎて、時田君とは一度も会わないままだったし、今は想い出になりつつある。<br />
想いを伝えることができただけでも達成感があったのかもしれないし、適うことのない想いだという自覚もある。<br />
だから、割と過去のことになってはいるけれども、だからといって、好きだった人のそういう話を完全に冷静に聞くことが出来るほどではない。<br />
それでも、平静を装うけれど。これは女の意地だ。<br />
「もう、見てられなくて」<br />
「それで？」<br />
「で、気を紛らわせるっていうか&hellip;&hellip;&hellip;他のことに夢中になれば、楽になれるのかもと思って、明志のこと紹介しちゃったんだ」<br />
「馬鹿じゃないの！？」<br />
思わずそんな言葉で突き放していた。<br />
「そ、そんなに言われなくても、わかってるよ！　だから失敗したって&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「そんなの、紹介するとかいう前に気がつくでしょう！　会いたくて会いたくて仕方ないのを我慢してるところに、他の男の人を紹介されてふらつくわけないでしょ！」<br />
「それはわかんないじゃん！　辛いときだからこそ、優しくされたらぐらっとくることだってあるよ！」<br />
「それは人に依りけりでしょ。その子はそういうタイプの子じゃないってことくらい、わかってなかったの？」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;でも、なんとかしてあげたかったんだもん！」<br />
思わずため息が洩れる。<br />
友達を思いやる気持ちは大事だとは思うが&hellip;&hellip;&hellip;何で、そんな判断を誤るようなことをしたのだろう。<br />
しかも、紹介したのが明志というのがありえない。何を血迷っていたのか。<br />
「なんで、会いたいのに会うのを我慢するの？　全然わかんない。あんな辛そうなの、見てらんないよ。それなら辛そうなところ見せないでよ」<br />
それは亜美の本心だ。多分、彼女には言えない本心。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;こういうのは見守る以外ないでしょ。当人が決着をつけなきゃ、どうしようもないことよ」<br />
「わかってるよ！　わかってるから、歯痒いんじゃない」<br />
ぎゅううううっと、亜美は力一杯枕を抱きしめた。<br />
やり方は間違っているが、友達を思う亜美が可愛い。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;お姉ちゃんは、時田さんと会ったりしてないんだよね」<br />
「生憎ね」<br />
大学が違ってからは、本当に遭遇することがない。<br />
「そっか&hellip;&hellip;&hellip;時田さん、どうしてるんだろう。どう思ってるんだろう」<br />
「そんなこと、本人に訊きなさいよ」<br />
「意地悪ー」<br />
上目遣いで睨まれても怖くない。<br />
「それより、失敗したのって明志のことなんでしょ。明志のことだから、のめり込んじゃったんじゃない？」<br />
「当たり」<br />
はぁっと今度は深い吐息。<br />
「もうどうしよう」<br />
「それは自分が蒔いた種なんだから、どうにかしなさい。それこそ、明志が飽きるか、こっぴどく振られるか、痛い目を見るかしかないと思うけどね」<br />
「そうだよねぇ&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
そしてまた深い深いため息を吐き出して、横にごろんと転がった。<br />
「達紀には相談したの？」<br />
「した。バーカ、知るか、って言われた」<br />
ああ。達臣の気持ちがよくわかる。<br />
人の恋愛には敏感なくせに、自分の恋愛にはとことん疎い妹。<br />
お節介を焼いている場合じゃないだろうに。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;何笑ってるのよー」<br />
「何も？」<br />
知らず緩んでいた口元を引き締め、亜美に背を向ける。<br />
「ほらもう。私も暇じゃないんだから、話が終わったら出て行きなさい」<br />
「冷たいー」<br />
それでも、渋々と亜美は部屋を出て行った。<br />
本当に、世話の焼ける妹だ。<br />
だけど、そこが可愛いところでもある。<br />
時田君と会う予定はない。<br />
だが、もし見かけることがあったら、亜美の気持ちを軽くするための手伝いはしてあげようか。</span>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
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    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/46</id>
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    <published>2009-06-17T00:54:32+09:00</published> 
    <updated>2009-06-17T00:54:32+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>国立亜美</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<span style="font-family: Verdana">明志を和希に紹介するのは、半分乗り気じゃなかったけれど、もう半分では乗り気だった。<br />
乗り気じゃなかったのはもちろん、和希の性格からして明志は絶対に好みじゃないとわかっていたからだ。<br />
明志は自分がモテる男であることを自覚していて、それを全面に押し出して自信満々で、またそれが人を惹きつける魅力になっている部分もあるのだけど、対和希の場合、それは全くの逆効果なのだ。<br />
和希は顔のいい男にはろくな奴がいないと思っている節があって、そしてかなり頑固にその意見を譲ることはない。<br />
だから、時田さんに好意を抱いたのはかなりすごいことだと思う。<br />
そう、和希は時田さんを好きだし、そんな和希に他の男を紹介するのはもってのほかだともわかっていたのだ。<br />
だけど、その反面、和希に新しい出会いを用意したいと思ったのだ。<br />
和希は春からのこの半年の間、見ていて痛々しかった。<br />
何があったのか詳しくは知らない。<br />
ちーちゃんはだいたいのところを知っているみたいだけど、話してはくれなかった。<br />
ただ、和希に哀しいことがあったと気づいただけ。<br />
その哀しいことが、時田さんと会えなくなったことにあるというのはすぐにわかった。<br />
もともと、和希の口から時田さんの話題が出ることはあまりなかったけれども、それまで以上に時田さんのことについて触れないようになった。<br />
それは、ちーちゃんも同じで、出来るだけ時田さんのことを考えさせないようにと気を遣っていた。<br />
そういう状況だから、わたしだって察する。<br />
今の和希には、時田さんのことは触れてはならないことなのだ、と。<br />
和希は今までのように笑ったし、喋ったし、変わらないようにしていた。<br />
だけど、どこか違った。<br />
２年生になってクラスが離れたから、和希の様子を窺う機会も前ほどじゃなくなったけれど、それでも気づいたくらいだから相当無理していたんだと思う。<br />
そんな和希をどうにかしたかった。<br />
和希が反発するとわかっていても、どうにかしたいと思わずにいられなかった。<br />
<br />
明志を紹介することになった経緯は単純。<br />
明志とわたしと、もう一人、達紀の三人は家が近所同士の幼なじみで、今でもよく一緒に誰かの家に集まってだらだらと過ごしている。<br />
多感なお年頃なのに、男女の隔たりとか外聞とか気にしないでいられる奇特な関係だと周囲には言われるが、当人たちは至って幼い頃のままだ。<br />
異性として意識し合うこともなければ、同性のいがみ合いもない。<br />
何でも相談するし、つい何でも話してしまう。<br />
そんなわけで、和希のことをついつい愚痴っぽくこぼしてしまったのがきっかけだった。<br />
辛い恋を忘れるには新しい恋だと、いつの時代の台詞なのかというようなことを言ったのが明志で、自らその新しい恋の相手に志願した。<br />
最初はもちろん、和希にはダメだと反対した。<br />
実は明志の前にも何人か紹介しようと試みて、ことごとく突っぱねられていたのだ。<br />
でも、明志は聞き入れないし、それどころかより熱を上げてしまったらしい。<br />
障害のある恋のほうが燃える、というやつだ。<br />
これ以上熱を上げてしまっては、和希は更に嫌悪すると考えて、その辺で諦めた。<br />
それに、本当に嫌だと思うなら和希はこてんぱんにやっつけるだろうし、そうすればそれで諦めるかもしれないし。<br />
もしかしたら、万が一ってこともあるかもしれないし。<br />
なんたって、無理をしていない和希を見ることが出来ればそれでいいんだから。<br />
<br />
だが、予想通りというか、期待を裏切らないというか、和希はものすごい勢いで明志を否定した。<br />
あの嫌い方は、明志が哀れに思えたほどだ。<br />
しかしながら、明志はそれくらいではへこたれなかった。<br />
それどころか、やっぱり熱は上がっていく一方で、今までは適当に女の子たちと遊んでいたくせに、それすら放り出して、和希をいかにして落とすか、ということばかりを考え始めた。<br />
正直、この展開は予想していなかった。<br />
まさか明志がハマるなんて思っていなかったから。<br />
明志の想いが真剣なものなのかまではわからなかったけれど、簡単に明志は諦めるつもりはないらしい。<br />
そのしつこさに和希は折れるのか、どうなのか。<br />
<br />
結果として、和希は実力行使の上で完全否定をしてきた。<br />
その日は、クラスメイトの恋愛相談という名の情報伝達に付き合っていて帰りが遅くなった。<br />
瞬く間に落ちていく夕日はもう夜に押されていて山の端に消えようとしていた。<br />
早く帰ろうと正門から続く坂を早足で下っていくと、その先に黒い塊があってぎくっとした。<br />
よくよく見るとそれは人がしゃがみ込んでいて、しかもその人とは明志だった。<br />
「どうしたのよ」<br />
声を掛けたら、陰になった顔を上げてこちらへ向けた。<br />
珍しく弱々しい笑みである。<br />
「あの子、パワフルすぎる&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「和希のことよね。だから言ったじゃない。ちょっとやそっとじゃ手に負える相手じゃないよって。何されたのよ」<br />
「回し蹴り」<br />
返答に困った。<br />
空手を始めたのはしっていたが、それを行使するほどまで抵抗するとは。<br />
よほど、嫌だったに違いない。<br />
そして、それだけ明志もしつこく迫ったのだろう。<br />
（でも、ちょっとやりすぎよ&hellip;&hellip;&hellip;）<br />
こんなやつでも、長いつきあいの幼なじみである。<br />
少しくらいかばいたくもなる。<br />
だが、内心でかばわれているとは思っていない明志は、ゆっくりと立ち上がると、にいっと自信満々な笑みを取り戻した。<br />
「やっぱり、いいなぁ、和希ちゃん」<br />
呆れた。<br />
この男はもう理解の範疇を超えている。<br />
回し蹴りまでされて、何故まだいいと言えるのかわからない。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;あんた、もしかしてMッ気あるんだ。今までSかと思ってたけど、実はMだったんだ」<br />
「和希ちゃんのためなら、MにだってSにだってなるさ」<br />
あっけらかんと言う明志にもうため息しか出ない。<br />
そして、和希に紹介したことを心から後悔した。<br />
もし、この先、和希が時田さんとの仲を復活させたりしたら、とんでもなく面倒なことになりそうなことが予想できたからだ。</span>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
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    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/45</id>
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    <published>2009-05-24T00:24:20+09:00</published> 
    <updated>2009-05-24T00:24:20+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>ロク</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<span style="font-family: Verdana">「妙齢の女性の年齢を話題にするって失礼じゃない？」<br />
「うわっ！！」<br />
和希の背中を見送っていたロクは背後からの声に、度肝を抜かれる。<br />
「な、ナナ&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
そーっと背後を振り返った。<br />
腰に手を当ててナナが仁王立ちしていた。<br />
「それにアタシを見習おうっていう心意気がいいのに、それにダメだしするっていうのも、アタシに失礼だよね」<br />
「どっから聞いてたんだよ！　っつーか、何盗み聞きしてんだよ！！」<br />
「隙のあるほうが悪いの。そもそも隙があるってたるんでるわよ～。そんなんじゃ、彼女も守れないわよ」<br />
「うるせー」<br />
ナナの横をすり抜けて歩き出す。ナナはくすっと笑うとロクの後ろを付いていく。<br />
「だけど、健気だよね～。あんたもあの子もさ。お姉さん、なんだか泣けて来ちゃうわ」<br />
「茶化すなよ」<br />
そう突っ返したが、ナナの言うとおりだと思う。<br />
告白して振られて、挙げ句の果てに、その相手に好きな人のことで相談されるなんて結構切ない。けれど、それでも話を聞かずにはいられないし、なんとかしてあげたいと思う。少しでも接することが出来るのなら、それが嬉しいと思う。<br />
「あの子だって、今はフリーみたいなもんでしょ。それにちょっと弱ってるじゃない。そこにつけ込むことはしないの？」<br />
ぐるりとナナのほうへ首を巡らせる。<br />
「それって最低だろ」<br />
「あら？　だって、それも一つの恋愛手段よ」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;ナナはそういうのされて嬉しいのかよ」<br />
「嬉しいとか嬉しくないとかいう問題じゃないのよ。ロクのことだから弱味につけ込むのが嫌なんだろうけど、アタシから言わせればまだまだ恋愛ってのを綺麗事にしか見てないわよね。本気で好きならね、なりふり構ってらんないもんよ。それに弱ってるからこそ、助けになりたいって思うものでしょ。そういう気持ちって、伝わるものよ。弱ってるところに優しくされたり、助けになってくれたりしたら、いいなって思っても無理ないのよ」<br />
ナナの言うことはわかりやすかった。<br />
それでも、踏み切れないものがロクにはある。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;それで振り向いて貰えなかったら、虚しいだけじゃないか」<br />
そうなることが目に見えている。和希は勇也しか見えていない。和希の原動力は今、勇也の関わることにしかない。<br />
「何もしないうちから諦めてるだけでしょ。まだ青臭い若造のくせに、守りに入ってるんじゃないわよ。何もしなきゃ何も変わらないのは道理でしょうが」<br />
「いいんだよ！」<br />
ロクは突っぱねた。<br />
何度も振られるのは嫌だった。しつこいと思われるのも嫌だ。今ならまだきっと感じのいい相手だと見て貰える。それでいい。<br />
ロクの頑なな態度に、ナナは肩を竦めた。</span>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/44</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://vbj.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC/%E8%B0%B7%E5%8E%9F%E5%8D%83%E5%A5%88_44" />
    <published>2009-02-03T22:30:01+09:00</published> 
    <updated>2009-02-03T22:30:01+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>谷原千奈</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p><span style="font-family: Verdana"><span style="font-family: Verdana"><span style="font-family: Verdana"><span style="font-family: Courier New"><span style="font-family: Verdana">「チョコレートケーキを作る！？」<br />
いつもより少しだけ高いトーンで、和希が口にしたことをそのまま繰り返す。<br />
「そう！」<br />
千奈の驚きに気がつかないようで、和希は元気よく頷いた。<br />
「バレンタインだし！　今年はちょっと頑張ってみようかなって」<br />
わずかに頬を染める和希は、とても可愛いと思う。<br />
見ているこちらが恥ずかしくなるくらい、可愛くなったと思う。<br />
それは見た目だけのことではなくて――見た目は前から可愛かったと千奈は思っている――元気が良すぎるほど良くて、男子顔負けだと思うくらいだったものが、最近はちょっとなりを潜めている。<br />
それは好きな人がいるからだ。<br />
あの和希が、と思う。<br />
誰よりも、きっと千奈よりも恋とか誰かを好きになるとか、そういうことから遠いと思っていた和希が、千奈よりずっと先に、一人の男性を特別に想うようになった。<br />
それが―――千奈には、寂しい。<br />
2年前は和希が一人の人を好きだということを苛立たしく思っていたが、今はそれほどではない。<br />
それでも、やっぱり和希にとって自分より大事な人がいるというのは、心穏やかではいられない。<br />
和希はもちろん千奈のことをないがしろにすることはないというし、千奈は千奈で特別なのだと言ってくれる。<br />
千奈もわかっている。<br />
だが、わかっていることと、感情が納得するのとはまた別の問題だ。<br />
いつか、千奈にも和希のように特別に想う人が出来たら、そのときは心から和希の想いを応援することが出来るのだろうか。<br />
とはいえ、今の可愛い和希のことを応援しないということも出来ないのだが。<br />
「そう&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
それでも今の和希の発言には、不安を覚える。<br />
応援はしたいが、こればかりは大丈夫だろうかと、不安になる。<br />
だからちょっとだけ笑みが引きつる。<br />
まもなくバレンタインディを迎える。<br />
和希としては、張り切りたいというのもよく理解できる。<br />
だが、チョコレートを買うのではなく、チョコレートを手作りするのでもなく、いきなりケーキに挑戦するとは&hellip;&hellip;&hellip;なんというか&hellip;&hellip;&hellip;ちょっと無謀だ。<br />
正直、和希はこれまでお菓子作りはもちろんのこと、料理にも手を出したことはない。<br />
学校の調理実習ですら、あまり関わらないようにしていたくらいだ（有り体にいればほとんど傍観者になっていた。せいぜい野菜の皮むき、しかも簡単なタマネギあたり）。<br />
つまりあまり料理のセンスがない、と言える。<br />
それが、いきなりチョコレートケーキとは。<br />
しかしながら、可愛い和希の嬉しそうな表情を消したくはないから「和希には難しいんじゃないかしら」とも言いたくない。<br />
だから、千奈は和希に協力する。<br />
和希のケーキ作りが失敗しないように。<br />
和希のために。</span></span></span></span></span></p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>アヤ</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>vbj.blog.shinobi.jp://entry/43</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://vbj.blog.shinobi.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC/%E6%BB%9D%E5%B7%9D%E7%AF%A4" />
    <published>2008-05-05T22:28:56+09:00</published> 
    <updated>2008-05-05T22:28:56+09:00</updated> 
    <category term="クライシス・ベイビー" label="クライシス・ベイビー" />
    <title>滝川篤</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<font face="Verdana">「帰ったのかね」<br />
この家の主であり、滝川の雇い主でもある、板橋の部屋へ戻ると真っ先にそう尋ねられた。<br />
「はい」<br />
「納得したわけではないだろうに」<br />
「そうですね&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
懐手をして座っている板橋の前に、座卓を挟んで正座をする。先日の陵和会の件についてその後の報告をしていたところだったのだ。<br />
「ただ、私の言い分に反論すべきところを見つけられなかったから大人しく引き下がったのだと思われます」<br />
玄関から出て行く和希の背中を思い出す。肩を落としたその姿は、一人で放り出すには心許なかった。だが、これは滝川が口を挟む問題ではない。滝川の考えとは別の考えが彼には伝えられている。滝川はそれを遂行する。それが最良かどうかは関係がない。最悪であれば、滝川も口出しをするが、このことについては最悪の選択肢ではなかったと判断している。選択は、冷静に出来ていると評価している。<br />
勇也が選んだ答えは、間違っていない。自分の力量を考え、よく冷静になれた。<br />
「賢いのも考えものだな」<br />
「勇也さんですか」<br />
どうやら、滝川と同じ事を板橋も考えていたらしい。<br />
「そうですね&hellip;&hellip;&hellip;冷静な判断が出来るのは良いことだと思いますが」<br />
「だが、判断が出来るだけでは困る」<br />
「それは、祖父としての言葉でしょうか？」<br />
板橋が口元を歪める。笑ったのだ。<br />
「そうだな。感情のこもった意見だ。老婆心というものだよ」<br />
「高井様を遠ざけてはならなかったと？」<br />
「巻き込みたくもないし、守ることができないのなら遠ざけようと思うのはわかるが、そうすると一人になってしまう。一人では何もできまい」<br />
「私がおりますが」<br />
板橋の傍に居たのは自分だ。片腕となって働いてきた。勇也に対しても同じように傍にいようと思っている。<br />
「うむ。それはそれで必要なことなのだが、まだ若いというのに孤立してしまうのは心配になるね。しかも想いを寄せた相手を遠ざけて、今後誰かを特別に想うことはあるのだろうかとね」<br />
勇也の性格からして、もう誰かを好きなることはないかもしれない。これまでだって慎重に人付き合いをしてきたのに、今回のことはその慎重さに拍車をかけてしまったのではないか。誰にも心を開かないまま大人になり、生きていくのではないか。板橋はそれを危惧しているのだ。<br />
「あのお嬢さんは、勇也のことを知ってそれでも付き合ってくれていたのに、そんな貴重な存在をわざわざ手放してしまうというのは、あまり賢い判断ではない。頭でばかり考えるからそんなことになるのだ。そこは一つ更に強い男になろうというくらいの意気込みが欲しいところだよ」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;高井様をお気に召しているようですね」<br />
「可愛い子じゃないか。今日も折角来てくれたのだから、会いたかったよ」<br />
今の板橋の表情を見たら、勇也はどう思うだろう。一度も見たことがないであろう表情に驚愕を隠せないだろう。<br />
「会ったら、発破を掛けるでしょう」<br />
「それくらいいいだろう」<br />
「それは、勇也さんの意志に反しますよ」<br />
「勇也よりお嬢さんのほうが可愛い」<br />
滝川はため息をつく。<br />
「そんなことを言ったら、勇也さんが泣きますよ」<br />
「泣くわけがないだろう」<br />
板橋は知らない。滝川が報告をしなかったからだ。<br />
勇也が涙を流したことを。<br />
「もっと勇也さんを労ってくださいね。悩んでいるんですから」<br />
「さてね」<br />
からかうような口ぶりに、滝川はもう一つため息をついた。<br />
板橋が楽しそうにしているのを見るのは嬉しいが、勇也の気持ちを思うと居たたまれなかったからだ。</font>]]> 
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            <name>アヤ</name>
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